人工知能
Moonshotに向けられた重い告発は蒸留ではない。中継のほうだ
Anthropicの9月の脅威レポートは中国の7つのラボを名指しし、約1億9000万件のやり取りが抜き取られたとする。その中に別種の告発が埋もれている——MoonshotとDeepSeekが、自社の有料ユーザーにClaudeの回答を出していた、というものだ。この主張は未確定の著作権法を必要としない。そしてその根拠は、同時に最大の弱点でもある。
MAI
Anthropicは9月10日、9月分の脅威インテリジェンス・レポートを公開し、中国を拠点とする7つのAIラボ——Alibaba、Moonshot AI、DeepSeek、Zhipu、Xiaomi、SenseTime、MiniMax——を名指しして、2025年12月から2026年8月にかけて約1億9000万件のClaudeとのやり取りを抜き取ったと主張した。
報道の多くはこの数字に集まった。だが数字はもっとも面白くない部分だ。競合の出力でモデルを学習させたという告発は古く、過去にもなされており、法的にはほぼ未検証のままである。二度読む価値があるのはもっと狭い主張のほうだ。MoonshotとDeepSeekが自社ユーザーからのリクエストを黙ってClaudeに送り、返ってきたClaudeの回答を自社ブランドの回答として返していた、という主張である。
レポートの主張
| ラボ | 主張されている規模 | 記述されている手口 |
|---|---|---|
| Alibaba | 2026年5〜7月に1億5100万件、ピーク時は1日約300万件、3,500超の不正アカウント | 最終回答だけでなく推論過程をClaudeに出させるよう設計されたプロンプト |
| Moonshot AI | 2300万件超、5,380の不正アカウント経由。ある10日間だけで約30万件の顧客リクエスト | Kimiの実ユーザーのリクエストをClaudeへ中継 |
| DeepSeek | 2026年7月の14日間で1210万件超 | リクエストヘッダを調べてエージェント型コーディングの通信を選び出し、中継 |
「ここ数か月、認可されていないラボは我々の防御を回避し、米国のフロンティアモデルの能力を収穫するための手法をますます洗練させてきた。」 — Anthropic、2026年9月の脅威インテリジェンス・レポート
Anthropicは対応として、推論をそのままではなく要約して返すようにしたこと、Fable 5.1で会話コンテキストを暗号的に結び付ける仕組みを導入したこと、抽出検知の分類器を配備したこと、高リスク地域のアカウントに本人確認を義務づけたことを挙げている。
中継が別種の告発である理由
蒸留は本当に未確定の法領域にある。この種の訴訟はまだ争われていない。モデルの出力は一般に著作権の対象にならず、それが最も分かりやすい主張を掘り崩す。そしてジョージタウン大学ロースクールのアヌパム・チャンダーが7月にNPRに指摘したとおり、米国のラボはその逆を論じるには立場が悪い。「AI企業は、他者から学ぶことは他人の著作物の完全に公正な利用だと信じ、そう主張してきた」。利用規約違反や営業秘密侵害という道は残るが、中国企業に対してそのいずれかを執行するのはほぼ机上の話だ。
中継にはそれが一切要らない。ユーザーがKimiに金を払い、Kimiに質問し、Claudeが生成した回答をKimiのものとして受け取ったのなら、被害を受けたのはAnthropicではなくそのユーザーである。そしてそれは、蒸留の定義が決着しなくても消費者保護当局が理解できる種類の被害だ。さらにそれは、モデル企業が売っているものそのものを突く。製品の一部が他社のモデルだったのなら、ベンチマークのスコアの意味も変わる。
根拠が同時に問題でもある
Anthropicによれば、発覚のきっかけはその中継そのものだった。Claudeへ回されたリクエストはAnthropicに届く。つまり他社ユーザーの会話の中身もAnthropicに届いたということだ。
Anthropicの記述によれば、その通信には、人民解放軍に関係する人物がアップロードした、追跡対象者を分析するCCTV映像、国有企業のエンジニアによる有効な認証情報を含む社内コード、中国の旗艦AIプログラムに関する内部文書の分析、ロシア国防省の認証情報、そして市民の移動を国民IDと突き合わせる自治体警察システムの資料が含まれていたという。
こちらも二度読む価値がある。この主張が正確なら、中国のAI製品のユーザーは——国家安全保障に関わる資料を扱う利用者を含めて——自分のデータが米国企業に渡っていたことを知らなかったことになる。それは知的財産をめぐる議論のどの部分よりも深刻な失敗であり、中継の主張を肩をすくめて流すのではなく精査すべき最大の理由である。
告発された側は誰も語っていない
Moonshotは中継の主張について何も述べていない。DeepSeekも同様だ。TechCrunchの記事にも名指しされた企業のコメントは一つもない。9月12日、中国外交部の毛寧報道官は、事実を歪めて中国を「中傷する」試みに断固反対すると述べたが、これは政府の立場表明であって企業による否認ではなく、具体的な主張には触れていない。
沈黙は自白ではない。しかし反論でもなく、これほど具体的な争いにおいては、場を告発側に明け渡すことになる。
慎重であるべき理由
ここに出てくる数字はすべて、一社の内部テレメトリに由来する。そのテレメトリは第三者による監査を受けておらず、帰属の方法論は概略しか説明されていない——Anthropicは、Alibabaの通信を一つのキャンペーンとしてまとめた理由の一部に、やり取りが固定された同一プロンプトを共有していた点を挙げている——そして告発している当の企業は、名指しした全社と直接競合している。
タイミングも書き留めておく価値がある。ホワイトハウスは7月、MoonshotがKimi K3を作るためにAnthropicのFableを蒸留したと非難し、北京はすでにそれを自国AI産業の抑え込みだと位置づけている。その論争の只中に落ちてきた脅威レポートが、それゆえに誤りだということにはならない。ただ、真空の中に届いたわけでもない。
具体的で反証可能な主張は中継のほうだ。これは外部から検証できる。ユーザーや研究者はKimiの出力にClaudeの指紋が残っていないか探れるし、Moonshotは自社のログを示すことができる。そのどちらかが起きるまで、これは著者だけが見られる証拠に支えられた重大な告発である。
参考資料: Anthropic — Detecting and countering misuse of AI: September 2026 · Bloomberg — Moonshot secretly routed user requests through Claude, Anthropic says · TechCrunch — Anthropic details distillation campaigns from Alibaba, Moonshot AI and DeepSeek · CNBC — Chinese AI labs secretly used millions of Claude exchanges to train their models · South China Morning Post — Moonshot, DeepSeek secretly routed user requests to Claude · The Hacker News — Anthropic says seven China-based AI labs ran industrial-scale distillation attacks · NPR — Allegations of AI distillation spark debate about IP theft. But is it illegal? · AI Commission — China rejects Anthropic's accusations against AI labs