人工知能
Metaの最大のオープンウェイトモデルは「米国製で最強」だ。その限定句の理由は自社のベンチマーク表にある
Metaは10月15日、Muse Spark Open を公開した。8160億パラメータ、オープンウェイト、そして複数のMac Studioをつないで動かすAppleとの協業。Metaが主張したのは米国内の王座だけであり、その理由は同社自身の数字が示している。
MAI
Meta Superintelligence Labs は10月15日、Muse Spark Open を公開した。まず読むべきはMeta自身の見出しの言い回しである。同社はこれを「現時点で最も高性能な米国製オープンウェイトモデル」と呼んだ。最も高性能なオープンウェイトモデル、ではない。米国製で最も高性能なもの、である。
この限定句は謙遜ではない。Meta自身のベンチマーク表が導く結論そのものだ。
公開されたもの
Muse Spark Open は総パラメータ8160億、トークンあたりの有効パラメータ420億の混合エキスパート(MoE)トランスフォーマーである。62層、256のエキスパートのうちトークンごとに8つが作動、隠れ次元8,192、128のクエリヘッドと16のキー・バリューヘッドによるグループ化クエリアテンション、語彙サイズ202,048トークン、そして前段に18億パラメータの Perception Encoder を備える。入力はテキスト・画像・動画・音声、出力はテキスト、コンテキストウィンドウは100万トークンだ。
重みは Hugging Face で公開され、Amazon SageMaker AI、Google Cloud Model Garden、Microsoft Foundry にもミラーされている。推論は Baseten、Fireworks AI、Groq、Modal、Nebius、OpenRouter、Together AI が提供し、SGLang、vLLM、TensorRT-LLM、Transformers、MLX、llama.cpp、Unsloth が対応する。配布面としては本当に広い。
ただしオープンウェイトはオープンソースではない。Muse Model License は、このモデルを用いた製品に「Built with Muse Spark Open」の表示を求め、モデルが「18歳未満の個人を対象としていない」と定め、第三者にモデルをサービスとして提供するライセンシーについては、そのサービスの総収益が連続する12か月間で2000万ドルを超えた時点でMetaへの通知と個別の書面契約の締結を義務づけている。社内利用、研究、ホスティングを伴わない自社製品への組み込みはこの条件の外にある。
表
以下の数値はすべてMetaのモデルカードから得たものである。第三者による再現は一つもない。
| ベンチマーク | Muse Spark Open | Metaが挙げる最良の競合 |
|---|---|---|
| JobBench | 61.8 | Metaが最高 |
| MCP-Atlas | 89.2 | Metaが最高 |
| ZeroBench | 50.0 | Metaが最高 |
| OSWorld Verified | 80.4 | Kimi K3、84.8 |
| DeepSWE | 60 | Kimi K3、68 |
| Terminal-Bench 2.1 | 76.4 | Kimi K3、85.0 |
| GPQA Diamond | 89.0 | Qwen、Kimi、93.5 |
| Artificial Analysis Intelligence Index | 39 | GLM 5.3、45 |
Metaが先行しているのはエージェントによるツール利用と長期的な業務タスクだ。一方で、コンピュータ操作・ソフトウェア開発・ターミナル作業では Moonshot(月之暗面)の Kimi K3 に後れ、総合指標では Zhipu の GLM 5.3 に後れ、大学院レベルの科学問題では Qwen(通義千問)と Kimi の双方に後れている。右列に並ぶ企業はいずれも中国勢だ。Metaが地理的な形容詞を選んだのは、そうせざるを得なかったからである。
Metaが大差で先行しているのは拒否挙動である。モデルカードは、社内のサイバー関連ベンチマークで99.2%、公開セットの集約では94.8%のジェイルブレイク拒否率を報告している。同じ条件下での Kimi K3 はそれぞれ75.5%と70.2%だ。加えて、誠実さを測る MASK で98.1%、エージェントの逸脱行動における有害行為率0%、StrongREJECT v2 で0.5(他の掲載モデルは62.9〜86.4)とされる。誰でも重みをダウンロードして追加学習できるモデルにとって、この差は SWE-bench の1ポイントより重い。なおMeta自身の執筆者も、これらの結果は公開されたチェックポイントについてのみ成り立ち、改変版はより安全でない可能性があると注記している。
難しい部分をやったのはApple
今回のローンチのもう半分の方が意外だ。Appleは同日、自社の研究記事「Local and Distributed Large LLM Inference with MLX and RDMA on Mac Studio」を公開し、MLX と Thunderbolt 5 上の RDMA ― macOS 26.2 で導入された低遅延の経路で、jaccl バックエンドとして露出する ― を用い、パイプライン並列またはテンソル並列で複数台をつないでモデルを動かす方法を説明した。
数字は具体的だ。Muse Spark Open は BF16 で1.6TB超、NVFP4 量子化で約493GBを必要とし、1台には収まらない。M5 Ultra の Mac Studio 2台では、パイプライン並列でデコード毎秒15.74トークン、テンソル並列で24.99トークン。4台なら36.73トークンに達し、最初のトークンまでの時間は8.4秒から4.8秒へ短縮される。Metaの表現は「2台の Mac Studio が1テラバイトのユニファイドメモリを持つ1台のスーパーコンピュータのように振る舞う」だ。AppleのCEOであるジョン・ターナス氏は、「Muse Spark Open の水準と規模のモデルを、机の上からこれだけ効率よく動かせるのは驚くべきことだ」と投稿した。
その「机」が留保点である。M5 Ultra の Mac Studio は96GBメモリ構成で5,499ドルから。この構成が必要とする512GBのビルド・トゥ・オーダー版はまだ出荷されておらず、今月下旬が見込まれている。現行の256GB機ですでに1万ドルを超える。4台構成のメッシュは、仕上げの良いラックだ。
4日違いの二つの戦略
Metaは10月12日、初のクローズドなフロンティアモデル Muse Wonder を公開した。重みは提供されず、最良の版は月額200ドルのサブスクリプションの背後にある。その3日後、同社は自社最大のオープンウェイトモデルを、2000万ドルの収益条項つきで、しかもプライバシーをめぐって15年にわたり最も声高な敵対者だった相手と組んで公開した。Metaのアレクサンダー・ワン氏はこれについて問われ、自分のチームは「パパとママがまた仲良くしてくれて嬉しい」と Axios に語っている。
どちらの公開も、研究の発表ではなく流通の打ち手として読めば整合する。Wonder はフロンティアを収益化する。Spark Open はその一段下をコモディティ化し、米国の研究所が概ね杭州と北京に譲ってきた領域にMetaを残し、しかもクラウドから借りるのではなく開発者が買えるハードウェアでそれをやる。だがそれは、オープンウェイトの首位を奪い返すものではない。Meta自身の表がそう言っている。
Sources: Meta AI Research: Introducing Muse Spark Open · Muse Spark Open model card on Hugging Face · Apple Machine Learning Research: Local and Distributed Large LLM Inference with MLX and RDMA on Mac Studio · 9to5Mac: Meta launches new Muse Spark Open model, optimized to run on Mac Studio · MacRumors: Meta and Apple Bring Muse Spark Open AI Model to Mac Studio · TechCrunch: Meta launches an open-weight model that runs on Macs · Techstrong.ai: Meta, Apple Partner to Bring Massive 816B-Parameter Muse Spark Open AI Model to Desktop Macs