人工知能
TSMCは第4四半期売上を14%増と示し、設備投資レンジには手をつけなかった。この組み合わせこそが本題である
6四半期連続で過去最高となったTSMCの決算には、第4四半期売上を523億〜543億ドル(第3四半期比約14%増)とする見通しと、7月に設定した600億〜640億ドルのまま据え置かれた2026年の設備投資枠が並んでいた。増産分を支えているのは新たな資金ではなく2nmの立ち上がりであり、その代価は粗利益率に表れている。
MAI
TSMCは10月15日、第3四半期の売上を1兆4,942億4,000万台湾ドル(467.2億ドル)、純利益を7,630億6,000万台湾ドル、希薄化後1株当たり利益を29.43台湾ドル(ADR1単位あたり4.60ドル)と発表した。売上は台湾ドル建てで前年同期比50.9%増、米ドル建てで41.2%増。純利益と希薄化後EPSはいずれも68.7%増となり、LSEG予想の7,463億台湾ドルを上回った。6四半期連続の過去最高であり、売上は同社自身が7月に示した446億〜458億ドルというガイダンスの上限を超えて着地した。
ただし、過去最高そのものは本題ではない。本題は、逆方向を指す二つの数字にある。
見通しは動いた。設備投資枠は動かなかった
| 指標 | 2026年第3四半期 | 変化・比較 |
|---|---|---|
| 売上 | 1兆4,942.4億台湾ドル/467.2億ドル | 前年同期比 +50.9%(台湾ドル建て)、前期比 +17.6% |
| 純利益 | 7,630.6億台湾ドル | 前年同期比 +68.7%、前期比 +8.0% |
| 希薄化後EPS | 29.43台湾ドル(ADRあたり4.60ドル) | 前年同期比 +68.7% |
| 粗利益率 | 66.4% | 2026年第2四半期は67.7% |
| 営業利益率 | 58.7% | ガイダンスは56.0〜58.0% |
| 第3四半期ガイダンス(7月公表) | 446億〜458億ドル | 実績は上限超 |
| 2026年第4四半期売上ガイダンス | 523億〜543億ドル | 中央値で第3四半期比約14%増 |
| 2026年設備投資 | 600億〜640億ドル | 7月から変更なし |
第4四半期の売上見通しは523億〜543億ドルで、中央値では第3四半期を約14%上回る。今サイクルで同社が示した前期比の増加幅としては最大である。魏哲家(C.C. Wei)会長兼最高経営責任者は、2026年通年の売上成長率を米ドル建てで約44%へ引き上げた。7月以降掲げてきた「40%をやや上回る」からの上方修正である。
これに対し、2026年の設備投資は引き上げではなく据え置きだった。7月に設定したのと同じ600億〜640億ドルで、第3四半期の支出は138億ドル。黄仁昭(Wendell Huang)最高財務責任者は、2026年から2028年にかけての支出が「過去3年をさらに大幅に上回る」と述べたが、これは今年についての発言ではなく、今後3年についての発言である。
1週間前、TSMCの月次開示で情報量が多かったのは、9月売上が前月比0.6%減でありながら前年同月比54.6%増だったという事実だった。作れるものはすべて売っている企業の特徴である。第4四半期の見通しは、その天井が1四半期で約14%持ち上がると言っている。その増加を新たな資金が買っていないのであれば、代わりに何かが支払っている。
支払っているのはノード構成である
| ノード | 第3四半期ウェハー売上に占める比率 |
|---|---|
| 2ナノメートル | 8%(2026年第2四半期は3%) |
| 3ナノメートル | 33% |
| 5ナノメートル | 28% |
| 7ナノメートル | 10% |
| 7nm以下の合計 | 79% |
2ナノメートルは、量産初年度にしてウェハー売上比率を第2四半期の3%から第3四半期の8%へ伸ばした。AIアクセラレータを含む高性能コンピューティング(HPC)は売上の68%を占め、前期比22%増。スマートフォンの10%増、構成比4%の自動車の23%増、そして12%減となったデジタル家電と比べれば差は明らかだ。
増産分はここから来ており、その代価は目に見える形で表れている。粗利益率は67.7%から66.4%へ低下した。会社は主因を2nm立ち上げに伴う希薄化と説明している。黄氏は海外工場による希薄化を本年は約2%、米国工場の立ち上がりに伴って3〜4%へ拡大すると見込んだ。TSMCは、資金を工場に変える速度より速く、新ノードを量産に変えている。その領収書が利益率の行である。
需要についての言い方は変わらなかった。そこが要点だ
受注についての魏氏の表現には留保がなかった。
AI関連需要はきわめて旺盛で、当社の供給能力を大きく上回っている。
そう述べながら設備投資枠の引き上げを見送る企業は、特定の主張をしている。いま効いている制約は資本ではない、ということだ。制約は、先端ノードを認定し、装置を入れ、歩留まりを出すまでに必要な時間である。だからこそ、先行きのシグナルは1世代先へ移った。魏氏はA14について、顧客の関与が「これまでの2ナノメートルの活動よりも実際に多い」と述べ、2027年にリスク生産、2028年に量産を見込むとした。N2の生産能力は2027年に2倍以上になる見通しである。
合わせて読めば、この四半期が語っているのは、AIの受注残は新たに建てることではなく既に建ててあるものを立ち上げることで埋められているということ、そして2027年の答えは2024年と2025年に確定した投資でほぼ決まっていたということである。2029年の答えはいま決まりつつあり、TSMCは本日その数字を変えなかった。
この読みが外れる条件
次回の決算説明会が、3年の方向性を言い直すのではなく支出そのものを大幅に引き上げるなら、この読みは成り立たない。1月に2027年の設備投資が現在の軌道を超えて上方修正されれば、TSMCは結局、制約は時間ではなく資金だと判断したことになる。そうならない限り、2028年の天井はすでに決まっており、アクセラレータ用シリコンを待つ企業が待っているのは発注書ではなく工程表である。
市場の反応について一点。台北上場株は発表前に約2%下落して引け、半導体株全般の下げの中にあった。この四半期は売上・利益・利益率のいずれでも上回った。相場が織り込んでいたのは、この四半期ではない。
Sources: TSMC — Third Quarter 2026 Results · TSMC Investor Relations — 3Q26 results and 4Q26 guidance · CNBC — TSMC posts record profit for a sixth straight quarter · TIKR via Yahoo Finance — TSMC posts a sixth straight record quarter · MarketBeat — TSMC Q3 earnings call highlights · BigGo Finance — TSMC lifts 2026 growth target to 44%, 2nm hits 8% of revenue · TechSoda — TSMC 3Q26 earnings call: A14 to outgrow 2nm
カバー画像: TSMC Fab5、撮影 Peellden、CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons より。